何かの病気で病院に行くと必ず受けなくてはいけないのが「検査」です。 医師は患者が訴える症状や検査データをみます。そして医師の豊富な経験や知識を駆使して、その人が今苦しんでいる病気を診断し、治療を始めます。医師の診断が正しい方向かどうかは検査データによる裏付けによって確認され、確定した病名にあった治療手段がとられることになります。そして治療を進めていく中でその治療がうまくいっているのかどうか、別の治療に変えていく必要があるのかなどといったことを判断するためにも何らかの検査が必要になります。臨床検査なくして、医療は成立しません。「根拠に基づいた医療」EBM(Evidence-based Medicine)が重要視される現代医療において、臨床検査情報も特に重要な役割を果たします。
細分化された専門医療、とても医師一人では成り立ちません。現在の医療では、各種医療従事者により構成される「医療チーム」が患者を支えています。 臨床検査技師もその重要なスタッフです。各分野ごとのスペシャリストが力を合わせて一人の患者を支えていく、それがチーム医療です。
臨床検査技師は、看護師、医師に次いで多い医療職種です。厚生労働省が発表した統計によると、病院に勤める医療従事者の中で臨床検査技師は看護師、医師に次いで人数の多い医療職種となっています。
臨床検査技師が業務として行う検査は、大きく二つに分類できます。
一つは、患者から採取した生体材料に対して行う「検体検査」、そして患者自身に対して行う「生理検査」です。また、検査のために患者から採血することも検査技師の大事な業務となっています。
全ての検査が病院内で行われる時代は終わりました。今は病院から検査を請け負う臨床検査センターなどの企業によっても臨床検査が行われています。また人材派遣業の進出、治験ビジネス、医療機器インストラクターなど検査技師の領域は多様化しています。
総合病院、一般病院、
大学病院、その他の病院
医師会検査センター、
検査企業など
労働衛生研究所、
医師会健診センターなど
治験企業、
試薬プロパーなど
保健所、学校教育施設、
公衆衛生機関など
「臨床検査技師」という資格制度は1970年から施行された、比較的新しい資格です。制度が開始されてから臨床検査技師の数は増加していき、現在病院に勤める臨床検査技師の数は約6万人くらいいると推定されます。
本校の求人数も平成の始めくらいまでは順調に推移していましたが、毎年2000名の検査技師が生まれるため職場は飽和状態となり、加えて臨床検査のオートメーション化、病院の合理化、雇用形態の変化などで求人は落ち込んでいきました。
しかし現在では求人数は上向きに推移しています。それは現在病院で働いている臨床検査技師の定年退職者が出始めたためで、検査技師の求人数は制度が始まったころの水準に迫ろうとしています。今やっと各年代の検査技師ががほぼ均等に存在する状況になったのです。これから退職を迎える世代の数がある程度一定となり、新規雇用も安定してくると考えられます。ようやく検査技師という職業が成熟期に入ったと言えるでしょう。